環境園芸学科
【昆虫生態学研究室の研究】「謎のカスミカメ」の生態が解明されました
昆虫生態学研究室で行ってきたブチヒゲクロカスミカメの生活史の研究が昆虫学の専門誌の一つ、Applied Entomology and Zoologyに掲載されました。
Jun-ya Tajima, Ryôhei Miyahara, Misato Terao, Yoshinori Shintani (2018) Environmental control of the seasonal life cycle of a zoophytophagous mirid, Adelphocoris triannulatus (Hemiptera:Miridae). Applied Entomology and Zoology 53: 333-341
カスミカメとはカメムシの中でも小さく弱々しく見えるのでこのように名付けられたカスミカメムシ科の昆虫という意味です(命名に関しては諸説があります)。あるとき、たまたまサツマイモ畑で鮮やかな緑色のカスミカメの幼虫らしき虫を見つけた学生が、「その正体を知りたい」という好奇心から研究室で飼育したことがきっかけで、生態を研究することになりました。
研究室では「謎のカスミカメ」と呼ばれていました。成虫まで飼育した後、カスミカメ専門の写真図鑑によって、種名が「ブチヒゲクロカスミカメ」だとわかりました。触角の節の色が目立つのでこのように命名されたのではないかと想像されます。当初は色々な植物を与えて飼育を試み、たいていの植物で育つことがわかりかけていましたが、偶然サツマイモ畑で別の昆虫が食べ残したガの幼虫の死骸を吸汁しているのを目撃し、このカスミカメは動物も植物も摂食するタイプの食性(zoophytophagy)だとわかりました。おそらく生態系の中で捕食者や分解者の役割も果たしていることでしょう。
学生が注意して観察していなければ何もわからなかったのに、ふとしたことから新発見につながりました。
掲載された論文では、野外での発生調査と室内での飼育実験によって、このカスミカメが季節的に生活史サイクルをどのように調節しているかを詳細に調べています。